LIFE SHIFT

三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

発想を転換すること。

おのぞみの結末 (新潮文庫)

星新一『おのぞみの結末』。

SF作家、星新一氏のショートストーリー集。

数ある作品の中で一番のお気に入りは「ひとつの目標」。

※あらすじ紹介(ネタバレありです) 

ある薬学研究者のもとに、一人の客がやってくる。世界征服のために、自分たちのグループに参加し、含有していることがばれない精神安定剤を作ってほしいという。世界の安定を図るため、かっとなりやすい国民性をもった国向けの食糧に混入するという。はじめは疑心暗鬼だった研究者も、次第に活動の趣旨に共感し、各界の大物がメンバーであることに安心して協力していく。精神安定剤を完成させたあとも次々と指示があり、研究者は使命感で研究に没頭していく。そんなある日、グループの最終目標だった「ある装置」が完成したとの連絡が入る。それは、貯蔵された核兵器を遠隔爆破させる素粒子発生装置だった。この装置の存在は全世界に示され、遠隔爆破を恐れた保有国は次々と核兵器を手放し、世界から核兵器が根絶されることとなる。これこそが、このグループの最終目標であったのだ。その後しばらく達成感に浸っていた研究者たちだったが、そのうち刺激のない退屈な日々に虚しさを感じるようになってくる。そしてある日、再びメンバーが集まって会議が開かれる。「緊張は文明にとって必要品なのかもしれない。」そういって研究者たちは再び、生き生きと研究を始める。もとの世界に戻すという新たな目標に向かって。

 

核兵器を遠隔爆破する装置、という発想がまず面白い。

この装置により、現在の核保有国と非保有国の立場が全く逆転し、核を持つ国は必死にこれを手放そうとし、持たざる国の立場が強くなる。これは、世界から核をなくすための理想的な手段に思えます。

しかし、そうしても結局、人間は次なる脅威を自ら作り出してしまうのだ、というのがこの話のオチ。

ごたごたがなくなっても、またどこからか新しいごたごたを見つけてきて、ずっとごたごたしていたいのが人間のサガなんでしょうか。

星新一さんは、近未来を予見する発想力はもちろんですが、非日常的なSFの世界で私たちの日常を淡々と軽妙に表現されており、本当に考えさせられる作品が多くあります。今後も折に触れてご紹介していきます。

 

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