NHK「新映像の世紀」第3集。現実を直視し、当事者としての自分を自覚すること。
NHKの「新映像の世紀 第3集」、とても重い内容でしたが見て良かったと思う。
ナチスドイツが強大な権力を持つようになった経緯や、大量虐殺を行い、その後敗戦国となるまでの過程が描かれている。
今回、ところどころ初めて見るカラー映像があった。それだけで、モノクロで見るよりずっと現実感が増すというか、映っている人々の「命のきらめき」のようなものを感じられて、いっそう胸が苦しくなった。
世界が、独裁者をつくった
人々がヒトラーを求めた背景には、世界恐慌に絶望した人々のファシズムへの希望があった。自動車王ヘンリーフォードや空の英雄リンドバーグ、哲学者ハイデガーやココシャネルなど、世界中の企業がナチスと手を組み協力した。アウシュビッツ収容所に移送される大量の囚人たちは、アメリカ企業が開発したパンチカードシステムによって効率的に管理された。
そしてナチスドイツは、独裁政権のもとで多くの経済政策を行い、週休二日制の週40時間労働を導入したり、機械を使わずに雇用を促進するなど、40%だった失業率を5%に低下させ、労働生産性を5年で2倍、税収を3倍にするなど成果をあげた。
この時代に生まれていたら、自分はどんな選択をし、どんな行動をとっただろうか。考えるだけでおそろしく、とてもくやしいが、きっと思考停止になり、自分の見たいものしか見なかっただろうと思う。この時代に、真っ向からナチスに抵抗した人たちには、心から敬服する。と同時に、その人たちのことがもっと知りたくなってくる。
現実を直視し、当事者であることを自覚する
ドイツ降伏後、連合軍のアイゼンハワー最高指揮官は、各収容所を隅々まで見て回ったという。そして、死体の山が築かれた収容所に、アメリカ軍部隊や報道関係者を呼び寄せ、この惨状がまぎれもない現実であることを知らしめた。
また一番ショッキングだったのは、ブーヘンヴァルト収容所の話。ここでは、ドイツ降伏後に米軍が2,000人のドイツ市民を収容所へ連行し、自らの指導者が行った惨状を強制的に見せた。将来、この出来事を在りもしないでっち上げだと言う人が出たとしても、「私が見ていました」と現実を伝えられる証人をたくさん作ったという。市民は並んで死体の山の横を歩きながら、恐怖におののいたことでしょう。
(あまりの現実に)女たちは気を失い、男たちは顔を背けた。
「知らなかったんだ」と言う声が上がった。
すると、解放された収容者たちは怒りをあらわにこう叫んだ。
「いいえ、あなたたちは知っていた。」
時代を超えて、一般市民として教訓にすべきことがある。
いまこの瞬間、世界じゅうで起きているテロや紛争に、日本が国としてどう関与し、行動しているのかをもっとよく知らなければならない。安全な場所にいて、自分が直接手を下さなかったとしても、「現実を知らなかったこと(知ろうとしなかったこと)」、そして「思考停止になったこと(自分の頭で考えられなくなったこと)」それ自体が、われわれ一般市民の罪になりうることを、歴史が教えてくれているからです。
ヒトラー「我が闘争」、授業採用で高校生に免疫を
戦後、ヒトラーの著作「我が闘争」は、著作権を利用することで、ドイツ国内で再版されずに現在に至っています。しかし、その保護期間が戦後70年の今年切れることから、来年は批判的解説を付けた再版が予定されているらしい。
今日のニュースにこんな記事がありました。日本ではもちろん、アメリカも中国も、その他世界中の国々に欠けているこの姿勢ですが、ドイツで実現することを期待しています。