LIFE SHIFT

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三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

大人になるということ。

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昔の書類を整理していたら、高校時代の国語のプリントが出てきた。「今 巣立とうとする君に」と題されたその資料は、高校三年の最後の授業で配られたものだった。

その先生は、一見風変りで朴訥とした仙人のような雰囲気で、私は彼の授業が大好きだった。授業のたびに配られるコラム風のプリントは、あるときは自分の生い立ちについて、あるときは戦争について、あるときは三島由紀夫について、あるときは愛について、若く未熟な私たちに様々な問題を提起し考えさせてくれるものだった。

そんな先生が、最後に配布したのがこのコラムだった。高校を卒業して10年以上たつけれど、久しぶりに読んだらちょっと泣けた。当時も暗記するほど読み込んだ文章だが、これだけ長い時を経ても、色あせないどころか、一層胸に迫るものがある。思えば、私たちが教えられたのは「国語」ではなく、この社会とどう向き合いどう生きていくべきかということだった。

加藤先生。今も私は、あなたに多くのことを教えられています。高校生という多感な時期に、先生に出会えたことを心から感謝しています。成人式を前に、以下にその一部を引用させていただきます。

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「今 巣立とうとする君に」

私は「関係ない」という言葉が嫌いだ。この言葉は、自分だけの世界に閉じこもり、他者を排除してしまう。およそ世の中にあるすべての事象に、自分と無関係なものがあるだろうか。すべてが関係し合い、その有機的な結合部分として自分自身があるはずだ。

大人になるということは、その関係性を、より広く、より深く把握し、自己の内と外にからみ取っていくことではないのか。アフガンの難民も少年事件も、数学の問題も今日の青空も、どれ一つ自分と無関係なものはない。

現代の日本人は、その無限の関係性を捨てようとし、捨てたつもりになっている。だから、他者の痛みを痛みと感じない。(中略)一方、自分自身については、単純に先を見通してしまう。金と便利さ、社会的地位と物質的豊かさをモノサシとして、自分だけの幸福を測るのに慣れてしまったのだ。

君たちには、広い世界に出てほしい。仮想現実や流行現象に埋没せずに、自分の頭と足を使って、自分らしく歩いていってほしい。今が盛り上がって楽しければそれでいいわなどと言って、親からもらった金で遊びまわるようなバカな娘にはならないでほしい。アジアの片隅では、日本人のために、ペットフードを低賃金で作り続ける少女たちもいる。彼女たちとこれ以上、加害者としての関係を作ってはならない。

進学する人も、就職する人も、こんなはずではなかったと思う時が(中略)たぶんやってくる。何かを与えられるのを待っても、何も変わりはしない。出会いを大切になどとよく言うが、自分がいい加減なら、いい加減な人としか出会わない。自分が前に歩き出そうとするとき、初めてよい出会いも生まれる。

雪の積もった朝、野原に出れば、自分の前には足跡がひとつもない。どちらに次の一歩をしるそうが、それは自由だ。今、君たちは、自分の自由と責任で次の一歩を踏み出そうとしている。

※冒頭画像:https://unsplash.com/

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