LIFE SHIFT

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三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

人間心理の恐ろしさの極限がそこにある。戦慄の『黒い家』

黒い家 (角川ホラー文庫)

貴志祐介『黒い家』。

これまで読んだホラー小説の中で、間違いなくベスト3に入ります。

改めて、幽霊よりも超常現象よりも、人間が一番おそろしい。

ストーリーは、生命保険会社で保険金の査定業務に携わる主人公が、加入者に呼び出されて家を訪問したところ、子供の首吊り死体を発見するところから急展開していきます。その子供の保険金支払をめぐって、サイコパスに目をつけられてしまった主人公が、じわじわと命を狙われるという、パニックホラー的なお話。

この本は「生命保険」と「心理学」という2つの主要なキーワードで成り立っています。

悪用された生命保険の表と裏

冒頭、査定業務を行う主人公の仕事ぶりが描かれるのですが、保険金支払時の査定がどのように行われるのか、また暴力団がらみで恐喝される様子苦情処理のマニュアルなど、「民間保険」の内情を垣間見ることができるのが面白いところです。

保険システムに関心がある人は、逆選択とかモラルハザードといった保険理論を超えて、より実態に近い保険制度の表裏(とりわけ負の部分)を知ることができると思います。

(多少ネタバレになりますが)死んだ子供に不審な点があり支払査定に時間がかかっているとき、加入者の男が主人公の元を毎日訪れ、執拗なまでに保険金支払の催促をしてくるシーンがあります。お金がらみの窓口では珍しいことではありませんが、読んでるだけでキツイ仕事だなーとストレスを感じてしまいます。保険金詐欺の現場では、こういう攻防が行われるのは稀なケースでないのかもしれません。

心理学でひもとく人間の狂気

サイコパスが「保険」を悪用すると、どれだけおぞましいことが起こるのか。サイコパスでなくても、現実社会において和歌山カレー事件のような保険金殺人が起こっていますが、その極限の事例を見せられたような思いです。

本書では、犯人の非人間的な行いが犯罪心理学によって分析されていますが、登場する心理学者も途中で惨殺されちゃって、結果として何が犯罪を引き起こす主要因になったのかわからずじまいでした。精神医療や心理学に関心がある方は、その視点から読み解く面白さもあるかもしれません。

  

貴志祐介氏の本は、「悪の教典」や「青の炎」なども有名ですが、その他どの作品を読んでもはずれがない、と言われる稀有な作家です。次はSFがテーマの「新世界より」を読んでみる予定です。

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