LIFE SHIFT

三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

天から役目なしに降ろされた物はひとつもない

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春に、念願だったアウシュビッツ収容所を訪れた。*1

はるか彼方の地・ポーランドまで赴いて感じたことの1つは、「こんな遠いところまできたけれど、もっと身近に、向き合うべき対象があるじゃないか」ということだった。

アウシュビッツのことを知っているくせに、日本人が関わった差別のことを知らないなんて、731部隊のことを知らないなんて、部落問題の現状を知らないなんて、アイヌの歴史を知らないなんて、これほど恥ずかしいことがあるか、と思ったのである。

そんなわけで、ポーランドから戻ってからは身近な差別を学ぶことが1つのテーマになった。

そしてこのたび、北海道をめぐる機会があり、白老町平取町(二風台地区)をはじめとするアイヌゆかりの地をまわって、アイヌ民族について学び始めた。手始めに読んだ本は脚注*2のとおり。

 

日本がアイヌ民族先住民族と正式に認めたのは、つい最近のこと

以下、備忘録のため抜粋。

日本がアイヌ民族先住民族と正式に認めたのは、2008年6月のことである。

アイヌ民族は自分たちの土地を奪われ、国を失い、言語、宗教、生活文化を奪われた民族であり、このような理不尽な歴史を背負って、「アイヌ民族」は今も生きている。

・(アイヌ民族の)男性は強制労働、女性は漁民の慰み者になった。

・与えられる食事も非常に粗末で、夜明けから日暮れまで、ぶっ続けで働かされた。(中略)耐えかねて、指がなくなったら帰してくれるのではないかと、自ら指を切り落とした。

・1年間の労働報酬というと、漆塗りの器、1個だけだったという例もある。(「アイヌ民族の復権」より)

アイヌ民族に対する理不尽な抑圧の歴史が、つい最近まで正式に認められていなかったのだということに、まずは衝撃を受ける。

差別の歴史を正しく理解するために

今回、3か所のアイヌ関連博物館*3をまわった。

気になったのは、このような差別・抑圧の歴史について詳しく扱っている博物館がなかったこと。

歴史を正しく理解し、同じ過ちを繰り返さないこと、これを後世に伝えていくことが、次世代の人間が果たすべき義務だと思う。そうでなければ、歴史は繰り返される。

日本政府が支配して、人々に強制労働を課した例は、残念ながらアイヌ民族だけではない。アイヌ民族の強制労働政策が成功したことから、日本政府は後に侵略した中国、台湾などの地域でも同様の政策をとった。(中略)しかし、そこには違いがある。中国や台湾はその領土を奪われることはなかったが、アイヌ民族は領土を奪われ、アイヌの国は残っていないのである

そのほか印象に残っているのは、二風谷ダム訴訟*4。水没地にアイヌの聖地「チプサンケ」が複数存在した件について、とてもわかりやすかったのが、

日本にやってきた外国人が、突然、なんの相談もなく「ダム作るから伊勢神宮沈めます」と言って、実際に沈めちゃったら、日本人の大多数は何してくれてんねんと怒りますよね?*5

というような話。我々の祖先は実際にそのようなことを実行したわけです。

 

ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

まだまだ勉強中ですが、アイヌ民族について知るために取っ掛かりとして読むなら、漫画「ゴールデンカムイ」が大変オススメ。タイトル「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」は、この漫画のカバーに記されている言葉で、アイヌの古いことわざだそう。

※冒頭画像:平河町二風谷アイヌ文化博物館より

http://www.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/nibutani/

*1:アウシュビッツ訪問記は、近くまとめて更新します。

*2:アイヌ民族の復権―先住民族と築く新たな社会とか

アイヌの歴史と文化 (1)とか北海道の歴史がわかる本など。

*3:アイヌ民族博物館(白老町)、平取町二風谷アイヌ文化博物館、旭川市立博物館。

*4:治水・利水を目的に、北海道沙流郡平取町に建設されたダム。建設に際し、水没予定地に住むアイヌ民族との軋轢がダム建設差し止め訴訟に発展し、アイヌ民族の先住性を問う契機となったダム事業。

*5:記憶が不確かで、だいぶ脚色入ってますが、こんなイメージの話でした。不正確ですみません。