LIFE SHIFT

三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

女は後半からがおもしろい

女性の働き方について、東大出身の元官僚(坂東眞理子氏)と社会学者(上野千鶴子氏)がそれぞれの立場で語る対談集。

女は後半からがおもしろい (集英社文庫)

失礼ながら、元キャリア官僚の坂東氏の話は、大昔の話だろうと思いながら読み進めていったところ、今も昔も公務員の世界はそれほど変わっていないことを実感。

(坂東)公務員というのは、「世のため人のための仕事であって、なおかつ自分もおもしろい」というような、本当にハッピーに思える仕事が三分の一あるとしたら、他の三分の一は「なんで私がこんなことしなきゃいけないんだ」と悩み、甘受しなければならない部分。そして「まあ、可もなく不可もなく」の思いになれるのが三分の一ですよ。(中略)だから、逆にモチベーションが高く持てないようなときには、あまり負けが込まないように。(中略)周りを敵に回して心をぐちゃぐちゃにしないで、おとなしく、喧嘩しないで黙々と耐え抜く精神的な強さが大事。(pp.76)

これは本当に正直な意見で、今も昔も変わらないんだなぁと実感する。

男性優位の職場で女ひとり奮闘しなければならない孤独とか、仕事の2/3が「おもしろい」と思えないけれど、それを毎日・何十年と耐え抜くのが公務員の仕事なんだ、とか。半世紀以上変わらなかったこういう性質が、今後40~50年の間に本質的に変わるとはとても思えない。だからこそ、これから公務員を目指す人には、良くも悪くも「公務員の働き方」がイメージできる一冊として読んでみてほしい*1

(上野)以前、坂東さんに「女性の働き方について、どんなアドバイスをなさいますか」とお聞きしたら、「仕事を手放さずに、仕事にコミットしなくてもいいから、マイペースで続けなさい」とおっしゃったでしょう。これまで、私も同じことを言ってきたんです。たとえば就職した教え子たちが転職したいとか、フリーになりたいとか言ってきたとき、いつも必ず反対してきました。どんな職場でもおまんまの種なんだから、定職・定収入がある方がずっといい。そこから放り出されたら、荒野に一人で立つのと同じ。荒野でファイティングを続けられる能力と覚悟のない人はやらない方がいい、と。(pp.86)

私が見てきた公務員の多くは、まさにこの「仕事にコミットしなくていいからおまんまの種として続ける」という精神で働いているひとたちだった。少なくとも、私にはそう見えた。

「仕事にコミットしなくていい」ということを受け入れられるか?どの程度までなら甘受できるか?そこが分かれ道だ。それを受け入れられなかった私は、退職を選んだ。

「荒野でファイティングを続けられる能力と覚悟のない人はやらない方がいい」という言葉の重みも、今は実感としてよくわかる。それでもなお、コミットできないような仕事に人生の貴重な時間を浪費するほど愚かなことはないと思っている。

自分の人生を生きることは、そもそも荒野に立つことから始まると思うから。

*1:もちろん、成功例の中でもトップクラスの成功例であることを念頭に置いた上で。