LIFE SHIFT

三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

公務員として働いて良かったこと

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このブログではこれまで、公務員退職者として思うこと、とりわけネガティブな方面のことを書き綴ってきた。けれど今振り返ってみて、公務員として働いて良かったと思うことも、少なからずある。いくつか、思い出しながら記録してみたい。

業務をマニュアル化・整理するスキルを身につけた

これは、他の仕事をしていても役立つと感じる点だ。

公務員はいつなんどき人事異動があるかわからない。定期異動でも、数年に1回のペースで必ず仕事が変わる。だからこそ、自分がしている仕事を、翌日から別の職員が引き継いでも全く問題ないように整えておく必要がある。このとき「私の仕事は誰でもできる仕事ではないから、マニュアル化などできない」とか「私だからこのような成果が得られたのであって、それを他の人に教える義理はない」などと考えているのは、仕事のできない公務員である。日々の課題を解決しながら、それを誰にでもできるよう分解・整理し、後任者にスムーズに引き継ぐところまでが、公務員の仕事である。

具体的には、

  • ルーティーンの仕事をマニュアル化し、
  • イレギュラーな出来事は業務報告として記録・保存し、
  • 文書(紙もデジタルも)は組織内で統一化された名称で整理、保管場所を明示し、
  • 前任者から渡された業務引継書類は、日々更新し続ける

私自身、新転地に異動したその日から次の異動に備えて、日々の業務を行いながら定期的に引継書を更新していた。日々新しく起こる課題を解決しながら、そこに共通する問題点や解決策を整理・抽象化して、次に似たような問題が起こったとき誰でも対応できる状態にしておく方法を学べたことは、公務員として働いてよかったと思う点である。

これがいま他の仕事でどう役立っているかといえば、業務分散による組織全体の業務効率化の効果が大きいのでは、と感じている。いまは小さな組織にいて、公務員の時ほど徹底したマニュアル化や定期異動に備えた体制は必要でない。しかし、業務が立て込んでくると、自分がすべき仕事と他の人に振るべき仕事を選別しなければならないことが出てくる。このとき、日ごろから他の人にやってもらえる仕事をマニュアル化して渡しておけば、スムーズに仕事を割り振れるというメリットがある。急に仕事を休まなければならなくなったときも、いちいち電話やメールで細かく指示を出さなくとも「あれを見て」と言えばそのとおりに進めてもらえる。これは、立場が上になるほどますます必要になってくるように思う。

働きながら大学院に通えた

先日、学部生の進路相談に乗った際に「公務員と大学院進学で悩んでいる」という学生がいた。私は、選べないならどちらもやればよいのでは、と答えた。

公務員は大学院進学について比較的、職場の理解が得られやすい方だと思う。それに、大学院での専門が公務員としての仕事に付加価値をつけてくれる。大きな組織の中で、そういう強みを持って働くことは、組織にとっても自分の精神衛生にとっても、結構重要だと思う。もちろん、二足のわらじを履いて仕事がおろそかになる、というのは本末転倒だから、体力的・精神的にやっていけそうかどうかはよく考えた方がいい。

加えて、大学院には私費で通った方が良いと感じている。(今は昔ほど多くはないが)公務の一環として大学院に通うことが許される人もいる。公務の一環であれば、給料が保障された上で、業務時間まるまる勉学に充てることができるので、それを狙っている職員も多いだろう。いっぽう私は、あくまで業務終了後のプライベートな時間に私費で通学することを選択した。その理由は、①研究テーマを自由に決めたかった(業務内容に制限されたくなかった)から、②いつ出るか分からない人事異動を何年も待つよりも、自分が行きたいと思ったタイミングで行くべきと思ったから、である。自分の興味関心を第一優先にした結果、研究の方が楽しくなって、結果退職することになったしまったわけだが、この選択は間違っていなかったと思う。

周囲が無条件に安心し、信頼し、理解してくれた

これは公務員を退職してから、より感じたことだ。

公務員というだけで、周りが「この先も安泰だね、心配ないね」と安心してくれたし、初めて会う人にもなぜか最初からある程度信頼してもらえた。

それが退職した途端、急に私の行く末を心配し、求めてもいない助言をしてくれる人が現れるようになった。私個人としては、むしろ公務員時代の方が悩みが深かったにもかかわらず、その悩みから解放されたとたん考え直せと言われるのは煩わしかった。逆に言えば、公務員でいさえすれば誰も心配しないので、知られたくない自分の悩みをあえて明かす必要もなく、自分にとっては好都合だったのかな、とも思う。

また、以前は「公務員です」の一言で何となく理解が得られていたけれど、今は自分が何者であるか言葉を尽くして説明しなければならなくなった。個人的には、そういう今の状態の方が健全だと思っているけれど、社会的にはまだまだ公務員に対する固定化したイメージがあって、それに良くも悪くも自分のイメージが左右されてしまう現状がある。

省庁の名前をバックに、いち個人ならば会えないような人と一緒に仕事ができた

省庁名が入った名刺を持って挨拶すれば、本来なら大学卒業したての若手が絶対に会えないような人や行けないような場所で仕事ができた。単にこれは、虎の威を借るキツネ状態の薄っぺらいメリットだけれど、そういう舞台を踏めたことは単純に貴重な経験だったなと思い出される。大企業の社長から助言を受けたり、新進気鋭の若手起業家と語り合ったことは、これからの長い職業にとって大きな財産になったと思う。

 

Photo by karl chor on Unsplash