LIFE SHIFT

三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

アウシュビッツ収容所を巡る旅・5つの心得

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実際にアウシュビッツ収容所を訪問してみて、これから訪問する人向けの導入編として、心得のようなものをまとめてみたいと思います。

 

1. アウシュビッツ収容所は、最低でも2日かけて回ること!

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実際に行ってみて、アウシュビッツ収容所は2~3日かけて回ることをオススメします。見るもの・感じること・考えることがたくさんありすぎて、せっかく現地まで行ったのに、1日で見た気になってしまうのはもったいない。おすすめは、

1日目に、唯一の日本語公式ガイド・中谷剛さんと主要な場所を回り、
2日目は、自分の足でゆっくりと収容所のすべてを見て回る

というもの。もし3日目まで余裕がある人は、現地窓口で予約可能な英語のツアーガイドを申し込むのも良いと思います。他言語だとどういう説明になるのか、違いがあるのか、いろいろ気づくことも多いでしょう。

 

世界には、見どころのある場所がたくさんあります。もちろんポーランドにも、きれいな観光地がたくさんあります。でも、アウシュビッツは唯一無二の場所。とりわけ、アウシュビッツで中谷さんという稀有なガイドから説明を受けることは、これ以上ない経験になると確信します。これから博物館を訪れる方は、その絶好の機会を逃すことのないよう、しっかり中谷さんの予約を取ってから行ってきてください。

ガイドの予約の取り方など、事前準備については下の記事で書いています。

2. 展示より写真撮影より何より、1回目はまずガイド中谷さんの説明に集中すること!

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初めてアウシュビッツを訪れると、ガイドの説明内容の濃さと館内を巡るスピード、展示の情報量の多さ、そして収容所全体に流れる息苦しい空気感、それらのすべてに、とにかく圧倒されます。圧倒されて、浮足立って、とりあえず写真を撮ってみたり、ガイドが説明しなかった展示をチラチラ気にしているうちに、注意散漫になって一度きりの説明を聞き逃したりします。

そこで、まず1回目は、中谷さんの言葉を聞き漏らさないよう、集中して耳を傾けることを強くお勧めします。写真撮影や展示の説明をじっくり読むことは、あとでいくらでもできます。それが、この場所に2日間を費やす醍醐味でもあります。とにかく、ツアーガイド中は説明に集中して、心に引っかかることはたくさんメモをとって、たくさん考えることです。

中谷さんは本当に守備範囲が広く、気になることはその場で質問できるし、質問したほうが話が広く深く発展していくので、その豊富な引き出しをたくさん開けることをお勧めします。それだけの価値が中谷さんの説明にあって、日本でどれだけ本を読んでも映画を見ても、ここでしか学べないことがあります。日本のすべての人に、できるだけ若いときに、経験してほしいと強く願います。

3. アウシュビッツ収容所は、見る場所でなく考える場所である

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ガイドツアーで収容所を巡ると、スピードも内容も濃すぎて頭はフル回転だし、こみあげる涙を何度も飲み込んで、激しく頭と心が消耗してしまいます。特に展示物はショッキングなものが多く、うず高く積まれたユダヤ人の靴や毛髪などはTVでも見知っていたけれど、実際に目にしたその日の晩は、あまりのショックと疲労で眠れませんでした。

そして翌日、一人で収容所を回ったときの気分の落ち込みは、さらに酷いものでした。いちど見ているにもかかわらず、途中で気分が悪くなってしまう。それに比例するように、2日目になると思考はさらに広く深くさまよっていく感覚がありました。前日のガイドの説明をより深く理解できたり、新たな疑問が湧いてきてその場でスマホを取り出して調べたり、それでもわからないことはメモをとって考えながら歩を進めました。戦争、差別、自分の政治参加や投票への意識、ヘイトスピーチへの態度、難民問題、戦地ジャーナリストに対する自己責任論…。アウシュビッツの歴史が、今に確実につながっていて、なお歴史を超えられていない現状について色々と考えを巡らせる貴重な機会となりました。

印象的だった出来事。ビルケナウの第2収容所にある有名な長い線路の上を、爆笑しながら歩いている高校生くらいの女の子たちに出会いました。言葉がわからないのでどこの国の子か分からないし、話の内容も分かりません。これだけのものを見て、この場所に立って、どうしてそんな笑い声をあげることができるのか。なんというか、根本的な価値観の相違というか、断絶というか、わかりあえない絶望感のようななものでいっぱいになりました。でも次第に、そういう人がいるというのもまたこの世界が多様であることの証明なのだと思えてきて、それを受け入れられない・排除したいと思うことこそが過ちの繰り返しなのだと気づきました。そういう人もいるけれど、そういう人が多数派になって取り返しのつかない過ちを犯すことがないように、私たちは考え行動し続けなければならないのでしょう。

4. 疲れたら、館内食堂で名物ジュレックを飲んでひと休み

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アウシュビッツへの訪問は4月の初旬。セーター+ダウンコートでも寒くて、特に2日目は雨も降っていて手がかじかむほどでした。これ以上に寒いなか薄着で強制労働させられてたのかと思うと、言葉を失います。一人でぶらぶら見学したのは3時間程度でしたが、寒気がして頭が痛くなるくらい全身クタクタになりました。

博物館の敷地内には、食堂や小さなブックストア、トイレなどが併設されたレンガ作りの建物があります(画像左)。ツアー開始や帰りのバスの待ち時間などに気軽に利用できます。カフェで飲んだジュレック(ポーランド名物のスープ)が感激するほどおいしくて、冷え切った体にアツアツのスープがしみました。

5. 博物館までは、大型バスで行くのがオススメ

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博物館のあるオシフィエンチムまで行くバスには、大型バス(画像)とミニバスがあります。地上から発車するのが大型バス(14ズロチ)で、地下から発車するのがミニバス(12ズロチ)。

大型バスは高速道路を走るので快適だし、博物館の目と鼻の先まで乗せてくれます。一方、ミニバスは本数も多くて少し安いけれど、ガタガタの下道を通っていくので、車酔い体質にはきつい。乗車してくる人を乗せたり信号で停まるたびに急ブレーキを踏むので、ずっと吐きそうでした。また、大型バスと比べて博物館の入口から少し離れた場所に停車します。車酔いしない人で、街並みを見ながらゆっくり向かいたい人はミニバスもお試しください。