エネルギーを出し惜しみしてると省エネ癖がつく
退職を考えていた頃、自分の思いとは別の何かに人生の貴重な時間を消耗させられている感覚があった。本当にやりたいことに人生の時間を使いたい、と切望していた。
いやだいやだ、辞めたい辞めたいとネガティブな気持ちで生きていると、そのことにエネルギーを消耗されないために、ひたすら省エネモードになる。人間関係も煩わしくなって、ひたすら透明人間に徹するようになる。
やりたいことをやるために早く帰りたいから、周囲の雑談に付き合わず黙々と仕事する。上司と意見が食い違ったとき、あんまり頑張ると疲れて自分のやりたいことに支障が出るから、ほどほどのところで妥協する。周囲と協調するより自分一人でやった方が早ければ一人でやってしまう。苦手だなと思う人とは距離をおく。職場の人には本音を言わない。怒ったり落ち込んだり喜んだりするような感情の起伏はメンタルを消耗するので、なるべく平坦な心でいるよう努める。
大切なものに力を発揮するために、そうしてきたのに。
今の私は、省エネ癖がついたまま元に戻らない只の腑抜けだ。自分の好きなことにすべての時間を使える、待ちに待ったときなのに。いま出し惜しみしてどうする、と思う。これこそが、問題に真正面から向き合わずに楽な方向へ逃げた過去の代償なのか。
確かに、日々の暮らしは幸せに満ちている。新婚だから当然だ。新居を整えたり、手料理をこしらえたり、そういう専業主婦然とした行いを案外楽しくこなしている。やるべきことが進まなかった日でも、何となく満足した気持ちになってしまう。
でも私は、「私」を休んでいる、と思う。
その日一日、くたくたになるまで自分の心の赴くまま精いっぱい生きたのは、いつだったか。エネルギーが、心の内から湧き出る熱いものが、自分から久しく発せられてないことに気づく。
今日一日をどう生きるか。「これに価値がある」と思うことを積み重ねる以外にない。それを毎日継続するだけだ。わかっている。よくわかっている。