LIFE SHIFT

三十歳の原点~LIFE SHIFT~

社会人大学院生の日記。新たな働き方を模索中。

Out of Box~枠を超えること。

地図のない場所で眠りたい (講談社文庫)

ここ2年くらいハマり続けている作家2人の対談集。

かたや人気番組クレイジージャーニーにも取り上げられ、圧倒的な変人っぷり*1で全国区になった辺境作家・高野秀行氏。

かたやNHK-switchで大阿闍梨・塩沼亮潤さんと対談するなど、冒険家でありながら精神性の高い文学表現が特徴的な角幡唯介氏。(著書の過去レビューはこちら

バカと言われるほど夢中になれるものを見つけたい

探検部*2の人間は異常に視野が狭いのである。だいたい先のことを考えようとしないし、過ぎ去ったことはすぐ忘れる。いつも「今目の前のこと」しか頭にないという点では犬といい勝負である。また空間的にも視野狭窄のため、思い込みが強く、物事を自分の都合のいいように解釈する癖がついている。

この視野の狭さはしかし、私や角幡のように探検部的な活動をする人間には不可欠な能力でもある。(中略)先のことを深く考えていたら出かけられない。また、過去に痛い目にあったことは速やかに忘れないと、次の活動にとりかかれない。間違っても懲りたりしてはいけないのだ。

読めば読むほど、常識の枠を超えて突き抜けている二人が清々しい。好きなことに夢中になるあまり視野狭窄になって、齢40を超えてなお、お互いに「お前バカじゃないのか」と正面切って呆れ合えるような生き方は最高だ。

自分の正当性くらい、自分の言葉で認めさせろ

たとえば山だったら、「ヒマラヤの未踏峰を上りにいく」と言ったら、説明する必要はまったくない。でも、未知の動物を探す*3とか剱岳を3000メートルにする*4となると、説明しないと意味がわからないんだよね。(中略)本当はただベーリング海峡を歩きたいだけなのに、言葉をもって自分たちの正当性を認めさせようとした。そうしないと自分たちの存在意義とか活動の意味が分からなくなってしまうので。

組織に属していると、「○○会社の△△部で××の仕事をしています」、「○○大学△△学科で××の勉強をしています」と言えば、社会人または学生としての正当性はほとんど担保される。自分がどんな仕事をして、どんな価値を提供し、どんな人の役に立っているのか。公務員だった頃は詳しく説明しなくても、「社会の一員」として認めてもらえた。

その立場から降りたとき、言葉が必要になった。誠心誠意、言葉を尽くして説明しないと、自分の存在を認めてもらえない。でも、急には言葉が出てこない。

いま私がやっていることは、一言で理解してもらうことが難しい。社会的意義も自分の存在意義すらも、他人からはとにかくわけがわからない、退職してまでやることか、という疑義を持たれているのをヒシヒシ感じる。

でも、分かりにくさは悪いことじゃない、とも思う。マイナーなところやニッチなところが強みであり、独自性でもある。

そこで閉じてしまわないこと、外からの刺激に常にさらされて鍛錬すること。それを一生懸命続けていれば、組織を離れても、プロとして仕事をしていけるんだろう。

 

*1:心から敬意を込めて。

*2:早稲田大学探検部。

*3:高野秀行はアフリカ・コンゴで幻獣ムベンベ、トルコで未知生物ジャナワール、アフガニスタンで未知生物ペシャクパラング、ブータンで雪男を探している。

*4:角幡唯介早稲田大学探検部時代、剱岳(標高2,999メートル)の標高をセメントで3,000メートルにしようとした。